ネコ・サピエンス全史 第1話f:id:kuroneko20:20190426183116j:image
「いやあ、すまんすまんハハ」と、橘通りで粗相という、この驚きの事態を、軽く済ませようと笑いながら詫びたのがいけなかった。
直ぐにビンタが飛んできた。
どうやら、アリーナを怒らせてしまったようだ。
「トイレは大丈夫ね?」と、朝アリーナから聞かれたが、Vサインしながら「大丈ブイ」などと 戯けたりして、はしゃいでいた。
今朝のマサルは、橘通り等で行われるストリート音楽祭に行けることで興奮し、朝のルーティンであるトイレを怠ってしまったのだ。
結果、このザマである。
しかし、マサルも頑張ったのだ。
バスの中で、度々怒涛の如く襲ってくる大腸からの「出せ!」という無謀な要求を、額に金柑のような汗をかき、また腰を振り、目を白黒させながら必死にこらえ続けた。
だが、お腹を時計回りにさすった事がいけなかった、更なる悪魔を呼び寄せる事態となった。
「うぐー!」ついに宮崎駅前あたりで唸り声を出してしまった。
「どしたつね?顔が青いーが?」と、アリーナは優しく聞いてきた。
この緊急事態を即報告すべきであった。
そうすればアリーナは、機転を利かして素早く対応してくれたはずである。
アリーナは、学校の成績も宮交シティスケート場のスケート教室でも抜群の成績である。だから、自分が出来ている分、やるべきことが出来ていない人には、チョー厳しい。
したがって、やるべきルーティンを怠ったマサルは、今更言えない。
笑顔をひきつらせながら「大丈ブイ」と、おどけるしかなかった。そして橘通り三丁目までもうすぐだ、ここはもう何としても踏ん張るしかないと考えた。
やっと、待ちに待った橘通り三丁目に到着だ。
バスを降りて山形屋百貨店のトイレに走りだした瞬間、「違うが、こっちじゃが」と、アリーナにリードを強く引かれたことで、全てが崩壊してしまったのだった。
うららかな早春の橘通りで、マサルは凍りついていた。
マサルはアリーナに対し、頭を下げ誠意をもって謝るべきであったし、そのつもりだった。
しかしアリーナの「マサル⁉︎」という強くもなく弱くもない微妙な言葉のトーンに、口が勝手に動いてしまったのだ。
思わず口から出た軽口によって、更なる窮地に追い込まれている。
この話は、橘通りで起きた取るに足らない話である。
現在は、西暦で数えれば4019年である。
アリーナは、ネコの新種ネコ・サピエンスで、マサルは、人類なのだ。
つづく
・ホモ・サピエンスは絶滅、なぜ?
・ホモ・デウスは?
・マサルが人類?
・人類とネコ・サピエンスに何が起きたのか?
次回マサルは、このピンチにどうする?
Coming Soon